「パオパオの木」がある町は、急な坂の上にあります
駅からも遠く 小さな子どもを連れての外出は 不便な立地です
そのため 0歳児のママたちが団体を立ち上げ 広場を作りました
そして10年後 より充実した子育て支援の活動をするためにNPO法人を設立
現在は「横浜市補助事業 親と子のつどいの広場 マムマム」「パオパオこどもひろば」
「パオパオ菜園」などを運営し 親子がほっとできる場づくりや活動を行っています
概 要
親子のフリースペースマムマム
私たちの活動は、「親子のフリースペースマムマム」設立からはじまります。 地域に子育て支援の場が少なかったため、0歳児の母親が町内会館を借りて広場を作りました。
始めた頃のマムマムには、充分なおもちゃや、イベントが少ないにもかかわらず、参加者は増えていきます。週1回の活動でしたが、乳児を抱えながらの運営には困難なものがありました。
3年目からボランティアの支援者が来てくれたことで、運営が安定します。マムマムはいつのまにか、地域になくてはならない場所となり、設立から10年間で、約2,443組の親子が広場に訪れました。
団体存続に暗雲
マムマムは担い手不足により、継続が困難な状況に陥ります。
スタッフが減る可能性があり、ほぼ無償のボランティアのままでは、新たなスタッフが増える見込みはありませんでした。担い手が1名だけになった場合、団体を継続することは不可能です。マムマム存続のために、市の補助事業へ申請して、人件費をねん出する方法を模索し始めました。
NPO法人パオパオの木
横浜市の補助事業「親と子のつどいの広場」を申請するために、法人化を検討しはじめます。
その頃、マムマム設立者などが「地域子ども会」を立ち上げていました。地域には子どもが遊べる公共の場所などがなく、小学生のための居場所が必要だったからです。そのような活動の、受け皿となる団体の必要性もあり、NPO法人を設立することにしました。
クラウドファンディング
市の補助事業に申請する場合、常設の活動場所を確保する必要があります。また賃貸契約資金も、事前に用意しなくてはなりません。そのため、クラウンドファンディングによって、寄付を募ることにしました。多くの方の温かいご寄付のおかげで、無事に目標を超える金額を集めることに成功しました。
親と子のつどいの広場マムマム
2018年12月 町内のマンションを借り、横浜市補助事業「親と子のつどいの広場マムマム」を開設。
市からの補助金で有給スタッフを雇用し、担い手不足が解消され、継続的な団体運営が可能となりました。そして開設日数も大幅に増え、充実した子育て支援の場を地域に作ることができました。
パオパオこどもひろば
2019年 「パオパオこどもひろば」を開設。子どもたちの遊び場と異年齢交流の場をつくりました。年に数回のイベントも実施。ホタル観賞会、パステルシャインアート、コロナ禍の食品配布会、ミニ縁日などを行いました。
パオパオ菜園クラブ
2020年 親子で自然にふれあう場として、「パオパオ菜園クラブ」の活動をはじめます。町内の菜園を借り、さつま芋やハーブ、大根などを栽培、収穫。近年は自然農にチャレンジし、無肥料の耕さない畑づくりをしています。
団体設立から17年
2025年 0歳児のママたちが立ち上げた団体は17年が経ちました。
NPO法人を設立してからも7年が過ぎ、「パオパオの木」は少しずつ根を張り、ゆっくりと成長し続けています。これからも親子がほっとできる場や、交流の場を提供するために、活動をしていきます。
自分たちでつくった広場だからこそ感じる
NPO法人パオパオの木 理事長 伊藤奈美
団体を立ち上げたのは、娘が生後3か月の頃でした。
そんな早い時期に、広場を立ち上げる人はあまりいないと思いますが、高齢出産だった私は、
産後の体力がなかなか回復せず、ストレスを溜めていたのです。
私の住む町は坂の上で、駅からも遠く、乳児を連れての外出に疲弊していました。
近所のママたちは元気で若い人が多く、体力的に私と合わない気がして、孤立するリスクも感じていました。けれど地域の子育て支援の場は月1回しかないため、そこに来るママたちとの距離感も、なかなか縮まらない気がして、不安でした。
設立当初はこんなに長く広場スタッフを続けていくとは思ってませんでした。
活動を続けていく中で、広場の価値を感じるようになったのです。子育てには正解がないため、悩みや不安を抱える人は多く、気軽に悩みを言えたり、共有できる場はとても大切です。
広場をつくる前は、子育てにストレスを感じている要因は自分にあると思っていました。私の子育てスキルや体力が足りないからだと。
けれど広場スタッフを経験していく中で、育児ストレスの要因は、個人の能力とはあまり関係ないと思うようになりました。情報不足、または情報過多。その人を取り巻く環境など、要因は様々です。
そしてもっとも重要な要因は、社会的なものだと思います。私たちの母や祖母の頃までは、集団で行なっていた子育ても、世の中の便利さが進むと共に、コミュニティは失われつつあります。
そのような社会的要因から、子育て支援の重要性やニーズは高く、そのために、私たちの広場も続けなければなりませんでした。
子育て支援が乏しい地域がゆえに広場をつくりましたが、継続していくことは容易ではありませんでした。そのため地域に広場があることが、あたりまえだとは思えません。
だからこそ、親子の支援の場がある大切さをより強く感じ、そのことが私の原動力となっています。
これまで、沢山の方々のご協力のおかげで、広場を継続することができました。そして、「こどもひろば」や「親子の菜園体験」など、活動を広げることもできています。
けれど地域の課題に対しては、やるべきことがまだ沢山あると思っています。
これからは、子育て支援を担う人材の育成ができる体制をつくり、地域のニーズに応えられるような団体運営を目差していきたいです。